紹介した動画はどちらも、マルレン・フツイエフが監督した『IT WAS IN MAY』の部分だが、特に本編のエンディングにあたるMELODY of PEACEと題された動画の中で、ふり下げた手をカメラが発見し、そのまま、その手が虚空へと押し込まれる先へ、ネガの上をなぞるような滑らかさで流れるようにカメラが振られると、まるで画面に押し広げられるようにして草花が写しだされる美しさの後景が。それと同時に流れはじめる音楽はいかにも洒脱なイージーリスニングだ。まるでカルメロ・ベーネが拳を振り上げ、眼の前で握りしめると音楽が鳴り出すような、人物による音楽の操作に愕然とする。アフターイメージとしての音楽を、物語の内部へと引き込む所作。曲はポール・モーリアの「Mama」。