昔に返るすべはない、だって?まったくばかげた真実だ。

わたしは後ろを振り返り、涙する

貧しい村々のために、雲のために、小麦のために。

薄暗い家のために、煙のために、自転車のために、雷鳴のように

通りすぎる飛行機のために。子供たちは飛行機を見上げる。

心の底から湧き起こってくるあの笑い方。

まわりを見つめる眼は、好奇心と憧れに

燃えあがり、はにかみもせずこわがってもいない。

わたしは死んでしまった世界をいたんで涙する。

だが涙するこのわたしは、死んでいない。

前に進んでいきたいのなら、わたしたちは

もはや帰らぬ時代を痛んで涙し、わたしたちを

牢獄に閉じこめてしまったこの現実に

否と言わねばならないのだ・・・・
     (ピエル・パオロ・パゾリーニ「悲しき熱狂」)