2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

世界は明るく、ますます遠のいていた。言明されることのできるすべてのことは、あらゆる未来性を剥奪されて、その残滓を人々が我先にと争う。前時代に獲得された習慣や、希望や、感情は埃を被っているか、あるいは絶滅していた。歴史に絶望して人々がそのほ…

Aと付き合うことでA以外と付き合う可能性を狭めてしまう躊躇いと、現段階でAと別れることの口惜しさが同等の均衡を保つとき、その状態は幸せと形容できるだろう。つまりは人と付き合う術よりも別れる術、とりわけ関係を発展させない術(情感をいなす技術…

言葉が傍を通り抜ける。その関係に情欲を介さないとき智慧が芽生えるはずだ。もっと効率よく感情を揺らす術を学ばなければならない。物語の唯一優れた特質は一応の真実であることだ。

巻き垂れて、窓辺は閉ざされたままで、招かれぬ風は季節に似たさざめきを窓の外で不穏に奏でている。不安。それは少なからず外にあるだろう世界の残りの全てより堪え難いもので、内に開かれた窓はそこに固有な外として、薄く、光のなかに経験されていた。経…

静物は名伏しがたい兆しを孕み、常に為されること以下の存在である。他律から切り離されたそれは無気味に事実を超えて、蒔くべき種を粉に挽いてしまっている。それぞれのべつなく典型的な外部として、静物は中身のない墓標のようなものである。また静物は一…