basilides2006-07-29

小高く、妊婦の腹ほどに固い春土に突き刺す十字は君を横に支え、上下を縦に支えている。生きている。そんなか細い釣り合いのなかでは二人は愛せず、いきみを惜しんで一つの身振りが否応無しに互いの注意をひいたが、遂に残される者が別れを生きる過程の始まりに私を象る器に並々と君が注がれて、私以上にはならない。宵とも知られず、いぎたなさに辺りは未知に振りきれて、例えそれを既知に斥けようにも、その確からしさのほどは見かけの背後に隠れる余白に一掴み落とす砂の動きにひとしい進度が見込まれるくらいのものであった。しじまに身を寄せて切れ端を舌で確かめながら、茫漠たる景観は見出される機会だけに圧倒されて、やがて来しな通る季節に外れた雨が降り注ぐ。盲いた光は関心をもたず一方的に曝し、暗い四肢を十字へ向かって差し延ばすが君は下から見えず、上からしか見えない。ここにおいて始まりは解消されたが、まるで自然が欠落している。ここは母の贓物とどれだけ隔たっているだろう。恐らくそれさえも砂で計られるに違いない。さぁ、口づけの用意を。近くで愛されるために、君を跨ぎ、生のままの娘の綻ぶ赤を優しくほぐすが、途端に不揃いの景観が折り重なり、君に向かって倒れたかと思うと、千々にことごとく文字になってしまった。私は私によって書かれていることを知っている。そこで私はその薄髭を「乳房」から離し睫毛にとまる「露」を払って、向こうに仄見える観客の一人たる口唇の半ばほどけた君の手を引き、一段高いきざはしへと招き寄せてやるのだ。(basilides「劇」)