シュテファン・ゲオルゲ「良心の探求Ⅱ」

汝は愛することを治さねばならぬ。さうすれば汝は愛さるることからも治るであらう。行け!平静な心で憎しみもなく愛もなく、人生を通って行け。途上の樹木に突当ることなく、砂利の上に躓くこともなく。自己を唯一人の善人と考えてゐる汝こそは悪人である。――他の人々は汝のやうにはないのであるから、彼等を汝と似せようとする苦しさのために、他の人々を逃れよ。汝の道は孤独を通して進んでゐる。幻影が汝の愛であるであらう!おお飢餓のために死んだ幻影よ、汝は彼等を背後に引ずつてゐるのだ!汝は幻影の重荷の下に喘ぎつつ進み続けるであらう、それは汝を夢の不可能の中に突落したのち死んだのだ。凡てが空であると云ふことが汝にとりて何になるか、また人が汝を愛すると云ふことが汝にとりて何になるか!汝は人が愛しないところの人である。汝は人が愛することの出来ない人である。汝の道を行け、さうして汝を殆んど許さない人々を狂気の如く愛せよ、さうして汝を憎む人々を狂気の如く愛せよ。道化の服装の下に汝の悲しき愛を隠せ、死んだ希望に悩める汝の魂を隠せ、汝のわるい魂と愛とを……おおさうだ、愛してはならぬ!それこそは死であらう。汝に取りては愛は一の犯罪である、人が理解しない汝、人が愛しない汝だ。ああ、汝の愛を以て他の人々を汚すな。愛するな!汝の愛は一の犯罪だ……行け!汝の道を――汝に指定された道を行け。眼をすつかり汝の魂の中に据ゑよ、眼をすつかり汝の魂の探求の中に据ゑよ。