basilides2008-10-11

今日会うのは珍しく朝であった。断り岸へとなだれ落ちる小路を駆けのぼれば、向つ峰はたおやかに何某かの鉛筆が進む順序である。海傍でまぶたに埃をかぶった女は見ぬゆえに疑わず、疑わぬゆえにそれは在る。男たちにとってもその際限のない参照は美に応えるが、その稀な優美さは必ずしも快活を意味せず、水より安い酒の染み込んだ黒いドレスは、若さを着飾る大人びた美しさをかき集めている。彼女の慎ましさは書くことそのものでなく、近付くほどに遠ざかり、そそのかされた身振りは姉妹について人が思うがごとく、誰に似るわけでもなく似ないわけでもない。言語が考えていることは、彼女について考えていること、考えていながら言語に見合ってその当人であることを忘れている。女はあるはずもない窓を背にして、肩にかかる星の柄を払い、乱れた髪をカチンの周りに絡めて。糸引く母語をぬぐえば、良き発音にわずかに血のいろの混じるところ、自称を患うことと変わりはない。手ずから裂かれた産声に子供たちは自らしるす口に、不意に穿たれた孔を窃視するだろう。掘り起こされて気やすく転がるただれた口の底を覗くように、女は衣裳を脱ぎ捨てると同時にその羞恥心さえも捨てて、私自身の重さに踏み出す。顔に位置するところもほどけて散らかった。(basilides「娼婦」)