乙女なを言う
行きませ、君、御身の道を。
美しきこの捉われの獄(ひとや)なる吾を措(を)きて、
多くの異郷の国々を旅し、
多くの女等の手をとりて、
なほもし異国の酒が
わが唇ほどに甘からねば、
そのときこそは、必らず吾が許に、
再び帰り来ませ、
いつ迄もわれ君が帰りを、
この岸辺に、待ちてあらばや」と。

芳賀檀著「背徳者の花束」所収「サッフォの歌(2)」