basilides2009-05-18

雨のきわで傘振り放けみれば、一把の小猫が夜の帳をよじ登るのをみた。
夜は弛み、あるいは伸び、裏地を見せて、薄くなり、そして千切れて、暗い細切れはふわりと一番に地おもてが近い。
裂けた夜からは、ありふれた風景の物静かな重苦しさがさらさらとこぼれていた。
やがて欠伸する猫は、ぬめぬめとした夜の面を掴むのがうまい。
爪よりの背の川。猫の背中が真下にぶら下がる。体は星まみれだ。
猫の一挙手で、ざらりと星が鳴れば、屑が風に流れ、その筋を撚る。
刹那ぱちりと拍手がしたので、猫は驚いて飛び降り、時折こちらを振り返りながら走り去っていった。