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ようやく明るい機内から宵闇のふかい底を覗くのでした。奥行きのなさにもう目が慣れません。ときおり点在する光が郷愁を誘います。あの瞬きは有史以来だれかが見ることのできた光だったのでしょうか。むしろ人はほの暗さより低く、かけられたショールの重さに身を屈めてい(られ)るのでしょか。けれども祈る手すさびの間にさしはさむ息は暗くてもひときわ熱いのです。手でふさいで息を整えました。見つからないために、息を浅くする必要があったのです。舌先の言葉も頬のうらにそっと隠しおきました。機体はいつまでもおらぶ風によって、その恥じらいを濯いでいます。夜の底が割れた音に耳をふさぎます。欠伸もでます。涙が出るのはいつも哀しいからではないからです。