basilides2006-07-07

夜の掟からかけ離れ、部屋に入るなり窓。枯れたベゴニア。その葉ごもりの深き影の跡を風が吹き払い、私をこそ吹き寄せた。窓に世界を領す闇が垂れて、暗さを持たぬ光はなく、奥行きに不均等な光は幅に広く均等に鞣された。私は自分の上に屈みこみ、その沈黙はありうべき欲望に対する継続的な戦わざる勝利に違いなく、その勝ち鬨に、時間を示す微かな傾斜に砂の落ちる音が未だ一帯に響いていた。《彼に私を殺させるために、私は彼女に何をしてあげればよいだろう》こうした決心はいかにも到達し難かったが、果たして希望は可能な限り把握されかにもみえた。視向はこなたからかなたへと向けられ、ここを歩きかしこへと赴く。手で確かめられた愛。愛するためには確かにどちらかが他方を組み伏せる必要があった。しかし、この埃と光が程よく混じり合った部屋で何ごとも私がそれと関係することなしには行われなかったにも関わらず、精神は恐らく後天的な文化的慣習が占めて、当然惜しみなく奪われていたということなのだろう。全体といえば、ない。私はうつ伏せになった私の頭を踏み付け、こめかみに銃口を突き付け、奥つ城に私の四肢は間抜けに転がって影に落ち込んだ。亡霊は現実のうえに徘徊しこそすれ、事物の夜をさまよわない。私こそ彼であり彼女であった。私は常にここに私自身を寄せ集め、彼は彼自身を、彼女は彼女自身をここによって寄せ集めていたのだ。(basilides「置き換えられる原因」)