basilides2006-12-01

どうしても少女はここにおり、こことは肉体であり、肉体は私で、常に人間だった。ようやく暮れやすい一日で、ここから見える濡れしぶき滲む砂々のうえに、星を追って流れる、同じ原因によって生まれた子供たちの列の先は今宵かなしく見えない。ここに何としても眼の端からこぼれる空ばかりはそのような効果を目指して、まるでゆりかごのようにあやされる嬉しさに少女は両の脚で本を閉じてひとりでに笑ってみせた。少女はだんだんと笑いだして、その白む声々はよく舌をつかみ、どこに紛れこんだかよくも表現されない。少女という全体的な経験が単なる三人称としてあらゆる使用に堪えているが、自身を手段として、部分としてのみ動かすところのものとして、ただ少女ばかりはものごしにやさしい媚をまつって、取るに足りぬ明るいものをあまりにはっきりと見、そして思い出すようにして知っていたにすぎなかった。以後の事実は連綿として不可能で、世界はようやく一人で足りていなかった。少女は依然としてさえずるようにして笑っているのだろうか。しかし、壁をめぐらしただけの孤独のなかで、言語を斥けるに応じて少女は常に空しくあらぬ方に置かれて、自身に知られずうまく笑うことさえできていなかった。ただ、そう、時折うなずいて、笑っている音だけがした。まさか哀しいのは誰だろう。固くなった少女が目覚めたとき、まだ目蓋をひらいていなかったとしても。(basilides「冷えた灰」)